2016年5月12日木曜日

The Beatles, While My Guitar Gentry Weepsのコード進行分析 その1



ビートルズ時代のジョージハリスンを代表する曲の1つ,
While My Guitar Gentry Weeps。
今回はこの曲のコード進行について分析してみたいと思います。
キーはAm、Bメロで同主調であるAに転調しています。

この曲のポイントはなんといっても冒頭のクリシェラインであると思います。
またそれに伴うモーダルインターチェンジも見逃せないポイントですね。

冒頭のAmからベースラインが順に下り、4小節目のFにつながっています。
ベースラインを含むコード内の音が半音ないしスケールに沿って滑らかにつながっているコード進行をクリシェと呼びます。
サムシングでも使われているジョージの十八番ともいえるコード進行ですね。

注目すべきは3小節目のF#の音。これはAmキー/Aナチュラルマイナーの中にない音です。
このF#の音はAナチュラルマイナーの6番目の音が♭してないAドリアンというスケールに含まれる音です。
すなわちこの3小節目だけ、Aナチュラルマイナーの世界からAドリアンという別の音階の世界になっているわけです。
ドリアンは6度の音が♭していないためナチュラルマイナー(エオリアンともいいます)よりわずかにメジャー(明るい)スケールに近いカラーを持っています。
ナチュラルマイナーが泣きのスケールとするとドリアンはそこよりいくらかクールな暗さを持ったスケールだというイメージを僕は持っています。

このF#の音を経てナチュラルマイナーの世界であるFに戻ります。
ドリアンの世界であるAm/F#の時にふわっとややクール感じになり、また泣きのナチュラルマイナーの世界に戻るわけです。
F自体は明るい響きのコードですが、この進行の中だとドリアンより暗いナチュラルマイナーの世界のコードなので暗く聴こえるのが不思議ですね。

またこの冒頭4小節のメロディーは同じものを繰り返しています。
特にドリアンのF#を押さえにいったりもしてません。
メロディーがステイすることでバックのハーモニーの流れが際立っているといえます。

そしてAメロ後半、5小節目からです。
注目は7小節めのD。 
本来ならばDmがくる所ですがDの3度の音であるFはF#となりDとなっています。
すなわちここもAドリアンになっているんですね。

また前半と対比してみると後半も同じコンセプトの流れとなっているのが見て取れます。
A、G、F#という3つのノートの流れを軸としたコンセプトが見て取れます。
前半Amのハーモニーのままベースラインの動きでそのノートの流れを提示。
そして後半はそのノートに一番素直にハマるコードをくっつけているということですね。

いずれにしてもF#が絡んでドリアンの世界となる3小節めと7小節目のコードが肝となります。
ここでドリアンというもう少しクールな音階の中で出てくるコードを引っ張ってくることによりどすんと暗いナチュラルマイナー/エオリアンの世界の雰囲気に別の風を呼び込んでいるわけです。
このような手法をモーダルインターチェンジと呼びます。
ここでの雰囲気の変化が単なる"Weeps"ではなく”Gentry”な雰囲気を出していると思います。

ハーモニーのバリエーションとしては3小節めのAm/F#をD/F#にしてみるとさらにドリアン感が強調されます。
個人的には好きですが7小節目のDでの待望感が少し薄れるような気も少ししますね。
もしくは3小節目はそのままに7小節めのDのベース音をF#にしてあげるとベースラインが揃うのでより対比が強調されます。

最後のEとBメロでの転調に関しては次の記事で触れたいと思います!