MacBook Proからもついにディスクドライブがなくなりました。
先立ってのiPadやiCloudのビビッドさに比べるとこの変更はやや地味でマイナーチェンジのひとつと片付けてしまいそうです。
しかしこの変更はAppleの姿勢や今までの軌跡を如実に表したものとして非常に意義深いものであると思います。
CDをはじめ回転物のメディアはその衰退や終焉は随分まえから言われていることです。
実際の日常を振り返って見ても、例えばCDを焼くという行為自体かなり少なくなっているのではないでしょうか。
今はデータのやり取りはUSBメモリかメールで済みます。外に持ち出すラップトップにおいてディスクドライブが必要となる機会はほぼないと思います。
しかしながら今までディスクドライブを撤廃したコンピューターはMacBook Airのみでした。MacBook Airはモバイルに特化したマシーンということでディスクドライブが必要な作業は家のデスクトップコンピュータで行えばよいという前提が少なからずあったと思います。
対してMacBook Proはそれ一台でパワフルな作業がこなせるマシーンという位置づけです。ラップトップとはいえ、MacBook Proとデスクトップがもう一台という使い方は想定されているとは言い難い。
そんなMacBook Proからディスクドライブがなくなったことが大きな意味を持つと思うのです。
多くの企業は人々のニーズを追うように製品を展開しているのに対してAppleは新たな価値観やライフスタイルを提示するような製品を作り出しています。
その過程でしばしば過去の製品は切り捨てられてきました。先ごろのos Lionが好例です。
Lionへのアップデートによって使用不可になってしまうソフトがかなり存在しました。
しかしiCloudを推進するためにその切り捨ては必要だったのではないでしょうか。
ディスクドライブはまだまだ必要であると多くの人は考えていると思います。活躍の頻度は少なくなったとはいえ、CDやDVDは有益なメディアであるでしょう。
しかしそれらのディスク系メディアの終焉は確実に近づいています。
今回のMacBook Proはディスク系メディアからの脱却を牽引し、次世代のコンピュータースタイルに人々を引っ張り込むという大きな役目を担う最初のコンピューターとなるのではないでしょうか。
そのための布石はすでにいくつも打たれています。
iTunseとApp Storeです。
iTunseは音源のダウンロード販売の道を拓きました。
またApp StoreではLogicやFinal CutといったAppleの主力ソフトが販売されています。
つまりAppleが自身で作り上げたシステムにおいてディスク系メディアは全く不要なのです。
この中においてユーザーはCDは面倒だというイメージを抱くのは当然な流れでしょう。
またAppleはこの新たな価値を提供するという指針によって多くのロイヤルカスタマーを生み出してきました。彼らがこのMacBook Proを購入することによって、Appleは彼らをAppleのエコシステムのかなり深い部分につなぎとめることが可能になります。
なぜならAppleのソフトほどクオリティーの高いソフトをダウンロードで買える場所などApp storeしかないのですから。
そうなればAppleの経営はさらに盤石なものとなるでしょう。
MacBook ProはAppleのクリエイティブな姿勢を示しつつAppleに大きな利益をもたらす可能性を秘めた製品であると思います。