アレンジなどが決まり、本番のレコーディングの折にはまずテンポを決めます。
今回のレコーディングもその例に漏れずまずはテンポの吟味から始めました。
アレンジができた段階で大体のテンポのイメージはあります。
皆さんも鼻歌を歌うとき、各曲ごとに大体のテンポのイメージはあると思います。
基本的にはそれと同じ感覚です。
今回は120からスタート。曲はBeatlesのDrive My Carです。
最初の印象は大体良さそう。
ここから115にしてみると遅い。音を置きにいっている感じ。アレンジが活きません。
なので速い方にシフトチェンジ。
レコーディングで大事なのはしっかり吟味すること、そして好き嫌いや感覚だけで決めないこと。
こうこうこういう理由ないし聴こえ方によりAよりBの方が良い。としっかり理由立てて決断をします。
レコーディングやクリエイションというと「感覚、センス」というイメージを持つ方が多いと思いますが、そのようなものに頼った判断方法では自分の中のルーティーンに陥り抜け出すことができません。
それは鼻歌を適当に歌うのと本質は変わらず、たいそうな機材で録音をしているのでしっかり作っているように感じるだけだと僕は思います。
BPMを120から2ずつあげていって様子を見ます。
もちろん録音してしっかりプレイバックを聴いて判断します。
弾いている時には少し速いかなと思ってもプレイバックを聴くともっと速くてもいいなと感じます。
その時点で前のテンポが遅いテイクはもうかなり遅く聴こえます。
入念に試していくとだんだん耳がアップデートされていく感じがしますね。
BPM128になった時点でさすがに慌てた印象になったので、BPM126をもう一度聴いてみます。
遅い印象も特になくノリもしっかり出ているためBPM126に決定。
テンポ決定の一番の基準は曲やアレンジが1番活きるテンポであること。
テンポが違うだけで音の質感やノリもかなり違ってきます。
もっと軽快なノリがいいのか、逆にもっとどっしりがいいのか?
これ曲と対話するようにプレイバックを聴いていくしかありません。
弾きやすい/弾きにくいといったプレイヤーの都合ではなく主体はやはり曲なのです。
しかし「さすがにこのテンポでは指が追いつかない」といったときもあるのは事実です。
これはバランスでどこまで攻めてどこで線を引くか。
冒頭で感覚で決めないことと書きましたが、あえて書きます。
ここは感覚と経験です。
今回一番言いたいことは音楽には「Yes and No」 相対する答えのどちらの部分も含んでいるというアンビバレンスな事象が山ほどあるということです。
その中になんとか線を引き判断を重ねていくのがレコーディングなのではないでしょうか?