2017年1月31日火曜日

マイキング実験。次回レコーディングに向けてのストラテジーまとめ

来月、クラシックギタリスト、片山海人くんのアルバム制作のためにレコーディングエンジニアを務めます。
昨日はマイキングや機材のストラテジーを立てるために片山くんにスタジオに来てもらい、色々実験をしました。
今回はDPAのをオンマイクで、ブルーのベイビーボトルをオフマイクで録音予定。

本録はホールで行うので特にオフマイクに関しては相当感じが変わるとは思いますが、おおまかなマイキングの傾向や懸念している問題の確認や機材の設定をいつものモニター環境で聴いて確認しておきかったので今回の機会を設けました。


今回確かめておきたかった点は主に以下の3つです。

•DPAの傾向。
マイクの位置やギターに対する向きでどのようにサウンドが変化するか。

•マイク2本によるサウンド
特に位相の問題について。

•マイクプリのセッティング
入力インピーダンスが4段階で選択可。それによってどのようにサウンドが変化するか。

では順番に得られた考察を書いていきたいと思います。




DPAの傾向
マイク位置がネックの方にいくと爪の音などトレブリーな印象に。
いわゆる弦の音をピュアに拾ってるというものです。
反対にボディー側にいくとボディの鳴りが出てきてベースなどのふくよかな成分が載ってきます。
この当たりは定石どおり。

マイクと同じ位置までギターに耳を近づけて聴いてみると変化がよくわかります。
やみくもに置いてみる前にまずはこうしてポイントを探るのが大事ですね。

ベースの力強さとコードの分離感、それでいてメロディーがトレブリーすぎずふくよかに鳴っているバランスのいいところを探します。
やはり12Fあたりを狙うのがベストとなりました。

次にボディに対する上下軸の角度。
DPAは指向性が強いので変化が顕著だと思われます。
ボディに対して下から向けるとブーミーすぎてダメでした。ボワンとコードが濁りメロディーが埋もれてしまう。
反対に上から向けるとブーミーさがなくなりクリアに。
しかしボディに対して上下軸の角度はつけずに直角に狙った方が良さそう。

これでかなりバランスがいいところまで来ました。
十分なベースとクリアなメロディーとコード。
伴奏ならこれでOKですが今回はソロギターなので少しブリッジ方向にマイクを向けてメロディーにマイルドさをプラス。

まとめるとマイクは12F上。
上下軸はボディに対して直角。左右軸はブリッジ方向へわずかに向けています。およそ15度くらいです。




マイク2本によるサウンド

心配の種だったのが位相干渉の問題。
これはしっかりしたモニターで聴かないとわからないだろうなと思っていたので事前に確かめておきたかったのです。
結論からいうと目立った位相干渉はなし。
2本のマイクを混ぜても不自然なブーストや打ち消し合いは起きずEQやボリュームを変えた場合の追従性もよし。
フェイズリバースでも録ってみましたが逆にカチカチの音になりNG。
ということで位相に関しては心配なし。

やはりオフマイクがあると自然な空気感が載ってきて奥行きがあるゴージャスな音になります。
しかし部屋によって大きく音が異なってくるのでホールの響き方を捉えてベストなマイク位置を吟味する必要がありますね。




マイクプリのセッティング
仕様するマイクプリはフォーカスライトISA Two。
こちらは入力インピーダンスが4段階で調節できます。
マイクの出力インピーダンスとマッチさせるための機能ですが、あえてより大きなインピーダンスで受けることでサウンドの変化も演出できます。

600Ω、1400Ω、2400Ω、6800Ωの4段階。
今回のマイクたちはどれでもOKな値です。
1400Ωが一番フォーカスっぽい音がしますが600Ωの方がよりナチュラル。
2400Ω、6800Ωになるとよりエッジの効いた音になりました。

という訳で今回は600Ωに決定。

最後にラフミックスを作って聴いてみて終了!
かなり手応えがあり本録がいっそう楽しみになりました。

もちろん本録の現場で再吟味が必要ではありますが、ストラテジーという点ではばっちり情報を得ることができました。