2014年1月5日日曜日

ジョゼフ・クーデルカ 黒の世界


国立近代美術館でジョゼフ・クーデルカ展をみてきました。
彼のキーワードは黒と写真の表現の可能性だと感じました。

まずは黒について。
黒と影の扱い方がクーデルカの作風の大きな部分を占めているように思いました。
黒は光が当たっていない部分。
黒で満たされた画面の中に浮かぶ人物の顔やオブジェクトは一層こちらの目を捉えるように思います。
生を感じる瞳とその周りを取り巻く柔らかな黒。
それは対象を浮き立たせると同時にそれ自体が無限の広がりを表現しているようでした。
扉の向こう、部屋の奥、そこに佇む深淵な黒は作品に更なる深みを与えているようでした。

また、主題が真っ黒に映るように撮影することにより主題そのもののではなく、その形、造形美を打ち出している作品もあり僕には新鮮でした。

そして写真の表現について。
ジョゼフ・クーデルカの写真を観ているとダリのようなシュールレアリスムに通じる造形の面白さがあるように思います。
その一瞬を捉えるという偶然性を孕んだ写真はシュールレアリスムやダダイズムととても近しいものなのではと思います。
実際にアンリ・カルティエ・ブレッソンやマン・レイは写真でシュールレアリスムの表現を試みています。
となればシュールレアリスム的な造形は日常に溢れていて、決して突飛なものではないのかもしれません。

写実、ドキュメンテイション、写真における表現の可能性は本当に幅広いものだと感じました。
最後に感嘆したのが、絡んだワイヤーのようなものが画面いっぱいに広がっている写真。
ワイヤーそのものは黒くつぶされていて、その形が画面一杯に表現されている。
これはまさしくオールオーバー。
ジャクソン・ポロックが打ち立てた抽象画の画法です。
こんなことまで写真でやろうとしているのか!とクーデルカに感服しました。

新年から非常にいいインプットが得られたと思います!