2013年8月3日土曜日

研究を重ねて対象と対話する。


先日のレッスンで、師匠にライブに向けてBeat Itの演奏を見て頂いた。
この曲は一貫してテーマをオクターブ奏法で弾いている。
テーマはオクターブ奏法のとき、目はどこをみているかということ。
そしてオクターブ奏法の開祖、ウェスはどこをみていたのか。

僕はずっと小指を見てやっていた。
ではウェスはどうだったかというと人差し指を見ていたという。

人差し指に着目すると、小指はみていなくても位置がぶれない。
アルペジオが圧倒的に見やすく、指の操作性も上がる。
今まで弾けなかったウェスのフレーズがすぐに弾けるようになってしまった。

素直に驚いたが、すぐに疑問が頭をもたげた。
どうやって師匠はこれに気づいたのだろうか。
映像で視線を分析したのか? 
いや、そんなことが古いビデオでわかるのだろうか。

答えは「人差し指を見ないと弾けないフレーズがあるから」ということだった。
ウェスのフレーズをアルペジオやトライアドという観点から分析すると、ウェスがどのように指板をみていたのかがわかる。
その上で、小指主体のアルペジオの見方では不自然な箇所が多く、人差し指主体ならば非常にリーズナブルだということを根拠にこの結論に至ったとのこと。

ここで師匠の言葉を借りたい。
「分析や研究を重ねることで、今はもういないウェスと対話することができる。それはウェス本人から教えてもらえるということだ」
考古学や物理学みたいでなんだかとてもわくわくした気分になった。
考古学者がいくつもの発掘や仮説を積み重ねて、壁画や文書の作り手と対話するのと同じことが音楽家にも必要なのだ。
そんな映像やCDの向こう側のミュージシャンと対話できるような研究力をつけていきたいと思う。
ぼんやりながらも憧れていた研究者という有り様さえ音楽家は内包している。
そのことに気づいてとても興奮したレッスンの時間だった。